新型コロナウイルスの影響やロシアのウクライナ侵攻などにより、原材料価格やエネルギー価格が高騰しています。仕入れ価格の高騰によるコスト上昇を販売価格に転嫁しきれず、収益が圧迫されている中小企業も多いようです。弊社のお客様の中でもこの原材料価格高騰に苦しんでおられる方は少なくなく、創業を予定しておられた方が時期をずらして様子を見るという方も複数おられる状況です。
そこで今回は、仕入れ価格の上昇と価格転嫁についてお伝えしておきたいと思います。


帝国データバンクは、中小企業を対象に原材料などの高騰の影響および価格転嫁についての実態調査を行いました。それによると、自社の主な商品やサービスにおいて原材料の不足や高騰の影響について尋ねたところ「影響がある」企業は77.3%にのぼったそうです。一方、「影響はない」とする企業は12.2%となっています。さらに「影響がある」企業を細かく見ていくと、4割程度は多少なりとも価格転嫁ができている一方で、「価格転嫁は全くできていない」企業は36.3%と、3社に1社以上となっています。
多少なりとも価格転嫁できている企業のうち、「価格転嫁は全てできている」は4.1%にとどまり、7割を超える企業で価格転嫁に課題を持っていることが分かりました。また、「価格転嫁はあくまでも仕入れ価格の値上げのみで、人件費など自社の経費の上乗せができる環境とはなっていない」といった声も聞こえてきました。

多くの企業からは「価格転嫁することは、下請けの立場からは不可能」「仕事が少ない中、どこも売上確保のために安価な見積りを提出するため、価格転嫁をしたら顧客を失う可能性がある」などといった厳しい声も上がっています。

取引先との価格交渉

原材料などの高騰を製品価格に転嫁できずにいると、コスト上昇のしわ寄せを自社で抱え込むことになり、経営を圧迫することになります。中小企業は発注者との力関係から値上げ交渉でつい下手に出がちです。単純な値上げ交渉では相手方が受け入れてくれないケースも多いと思います。しかし、契約内容と数字を冷静に分析し、準備したうえで交渉すれば、簡単ではありませんが値上げも可能です。
原材料の価格が変動しているのに、原価計算、価格設定の基準を長年見直していない中小企業は多いと思います。「とりあえず前と同じ値段で」と前例踏襲で取引を継続している企業は少なくないようです。また、特定の会社に依存している企業ほど価格交渉力は弱くなるので、既存取引先との交渉をしつつ、新規取引先の開拓や新規事業を考えることも必要といえます。
一方、明らかな原材料の値上げ分を価格に転嫁できず理不尽な価格設定を取引先から要求される場合は、全国に設置されている「下請けかけこみ寺」の相談窓口の活用も検討してみましょう。
下請けかけこみ寺下請かけこみ寺事業 | 公益財団法人 全国中小企業振興機関協会 (zenkyo.or.jp)

相談員による相談対応のほか、紛争解決に向けたアドバイスが受けられます。構成取引委員会では、仕入れ価格などが上がったのに下請けとの値上げ協議に応じなかったり、納入価格の引き上げを求められても取り合わなかったりすれば、下請法違反の恐れがあるとして、現在、監視を強化しています。

原材料やエネルギー価格は、他国の需要動向、生産国の政治状況など、さまざまな原因で変動します。そのため、事業計画を立てる際に何%の変動であれば耐えることができるのかを事前にシミュレーションしておくことも大切です。価格変動が起こることを前提とすることで、いざ価格変動が起きた際に冷静に対応することができます。

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