経済産業省は、新型コロナウイルスの追加経済対策として創設される「事業再構築補助金」の概要を発表しました。事業再構築補助金は、中小企業の新分野展開や事業転換などを支援する制度です。たくさん情報が出回っていますが、ここでは簡単に「事業再構築補助金」の概要をご紹介します。
事業再構築補助金は、新型コロナウィルス感染症の影響で、需要や売上の回復が難しい中で、新規事業分野への進出等の新分野展開、事業転換、事業再編などに取り組む中小企業を支援する補助金です。
■補助対象要件
①直近6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高が、コロナ以前の同3カ月の合計売上高と比較して10%以上減少している
②事業計画を認定支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む
③補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、または従業員一人あたり付加価値額の年率3.0%(一部5.0%)以上増加の達成
※③については、申請時点ではこのような要件を満たす事業計画を作成することになります。
なお、「任意の3カ月」が連続している必要はありません。付加価値額は、営業利益+人件費+減価償却費となる予定です。
■補助対象となる経費
建物費、建物改修費、設備費、システム購入費、外注費(加工、設計等)、研修費(教育訓練費等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)などが補助対象経費に含まれます。
※補助対象企業の従業員の人件費及び従業員の旅費は補助対象外
■補助金額・補助率
・中小企業(通常枠)
100万円以上6,000万円以下 補助率3分の2
・中小企業(卒業枠)400社限定
6,000万円超~1億円以下 補助率3分の2
・中堅企業(通常枠)
100万円以上8,000万円以下 補助率2分の1(4,000万円超は3分の1)
・中堅企業(グローバルV字回復枠)100社限定
8,000万円超~1億円以下 補助率2分の1
・特別枠
通常枠の要件に加え、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年(もしくは前々年)同月比で30%以上減少していることが要件。事業規模に応じて補助上限額が設定。補助率は中小企業4分の3、中堅企業3分の2
■補助金活用のイメージ
【例1:衣服販売】
小売店舗による衣服販売業を営んでいたところ、コロナの影響で売上が減少したことを契機に店舗を縮小し、ネット販売やサブすくサービス事業に業態を転換。
(補助対象経費の例)
店舗縮小にかかる店舗改修の費用、新規オンラインサービス導入にかかるシステム構築の費用など
【例2:飲食店】
レストラン経営をしていたところ、コロナの影響で売上が減少。店内での飲食営業を廃止。オンライン専用の注文サービスを新たに開始し、宅配や持ち帰りの需要に対応。
(補助対象経費の例)
店舗縮小にかかる建物改修の費用、新規サービスにかかる機器導入費や広告宣伝のための費用など
【例3:美容室】
一般客が減った美容室が、インターネットを活用した着付けレンタル事業に参入
(補助対象経費の例)
新しいシステム導入費用など
補助金の公募は3月中にも開始される予定で、今後、内容が変更される場合もあります。
さらなる詳細は経済産業省HPにてチェックしてください。
さて、ここまではあちらこちらで情報が公開されており、注目度は非常に高くなっています。
そして申請に向けて各種セミナーや相談会等に行かれる方も多いように見受けられます。
でも皆さん、本当に御社に合った補助金なのかでしょうか?
どうか、今一度見つめなおしていただきたいと思います。
というのも、補助額の大きさ、また汎用性の高さから、この補助金の取得に力を入れようと考えている事業者さんがたくさんいらっしゃいます。
お気持ちはとてもよく理解できるのですが、“事業再構築”補助金ですので、正直なところ先ほど補助金活用イメージで挙げた例では該当しない可能性が高いように感じています。
もっと事業内容や形態をガラリと転換する必要があると考えられますが、果たして本当に転換して良いのでしょうか。
いずれ転換するつもりで機会を伺っていた、転換しなければ活路がない、このような方は是非補助金を活用して事業転換を図っていただきたいと思いますが、一部では補助金取得を主な目的とし、それに伴ってやむを得ず(形として)事業転換を行おうと考えている方もいらっしゃるようです。
何のための補助金なのか、自社にとって本当に活用が必要な補助金なのか、そこの見極めをしっかり行った上で申請しなければ、いざ計画通り実行となった時に思い描いていたように事が進まない、とんでもない落とし穴があった、というようなことになりかねませんのでご注意ください。
弊社でも事業再構築補助金へのアドバイスを行っておりますが、弊社の場合は、まずはビジネスモデルキャンバスで現状のビジネスの整理を行い、次いで転換後の事業におけるビジネスモデルキャンバスの作成を行います。
二つのキャンバスを並べて俯瞰的に見直し、転換する事業の問題点を洗い出し、ここで一度、補助金申請が本当に必要かどうかを再検討するお手伝いを行っております。
この補助金の存在をきっかけとし、最終的に申請に至らなかったとしても事業の見直しにお役立ていただけますので、ご興味があればお問合せよりご連絡くださいね!